國體の本義 前田慶一 現代語訳
上巻
國體(国体) 國體の本義(国体の本義)
『大東亜戦争とわれら』 第一章
文部省教学局編纂 昭和一七年七月一三日発行
第一章 大東亜戦争はどうして起こったか
昭和十六年(一九四一年)十二月八日、私ども国民は米国及び英国に対する宣戦の大詔を戴いた。この日早朝、我が陸海軍はついに米英軍の両軍と西太平洋において、決死の戦いを開始した。その日を、来る日も来る日も、我慢に我慢を重ねて来た一億国民が、ついに堪忍袋の緒を切る日が来たのである。
1.米英は支那を手先にした
思えば、支那事変が始まってから早くも五カ年の月日がたった。皇軍は蒋介石の軍隊を打ち破り、その重要な拠り所をことごとく陥れた。蒋介石は奥地の重慶(南京→武漢→重慶)への疎開を余儀なくされた(重慶国民政府)に逃げ込みながら、それでもなお、長期戦の最後には日本に勝つのだと、口先だけの強がりを言っている。
小銃や大砲、戦車や飛行機など、何一つ自分の力で満足に造ることのできない重慶政権、四億の民衆をさんざん苦しめた末、国内の重要な地方をすべて失ってしまった重慶政権が、なおも交戦を続けることができるのはなぜであろか。
それは、アメリカやイギリスなどが蒋介石の後ろ盾になっているからだ。それではアメリカやイギリスがなぜ蒋介石を援助するのか、その魂胆はいったいどこにあるのかというと、詰まるところは、日本を苦しめ弱らせたいという以外にはないのである。
2.米英の野望は昔からである
アメリカやイギリスは、早くから東亜を思いのままにすることをもくろんでいた。そのためには、ずいぶんと酷い手段を平気で用いてきた。イギリスの宝庫といわれるインドはどうであったか。インドは昔は世界で指折りの農業国として富んでいたのに、悪賢いイギリスの手が伸びてからは、農産物は思い切り安値でそっくりさらわれるし、以前からの工業はイギリスの機械工業に押されて倒れてしまい、住民たちは否応なしにイギリスの商品を買わされた。なんとか工面をして此の苦境から逃れようとする者には、高い利子で金を貸し付けて、かえってますます身動きならぬ状態に陥れた。
こうして、イギリスのためにすっかり荒らされたインドに、飢饉や疫病の流行が続いて、三億の住民が苦しみ抜いているとき、英本国の首都ロンドンの商店街に日一日と賑やかに栄え、イギリスは、いよいよ肥え太っていった。
ビルマ(現ミャンマー)もマレー(マレーシア)も、同じようなしかたで、二重にも三重にもイギリス本国に縛り付けられてきた。
オーストラリア(原住民)も、イギリスのためには酷い仕打ちを受けた。非道にもイギリスは住民をいじめ抜き、カンガルー狩りでもやるように撃ち殺したりなどして次第に彼等を滅亡させ、今日では、我が国内地の二十倍もある広大な此の土地を、わずか東京市ほどの人口で独り占めにしてしまった。
一方、アメリカは、幕末にイギリスが香港を奪い取って、支那を苦しめていた頃、通商にかこつけて、日本を手に入れようと乗り出してきた。そのとき浦賀にきた黒船は、談判がうまくいかないと見ると、品川沖まで姿を現わして、わが国を脅しつけようとした。
それは、ちょうどイギリスがインドや支那に対してとったのと同じ手段であった。しかし日本は、こんな脅しにひるまず、口先だけの甘い言葉にも引っかからず、維新の大業を成し遂げて乗ずる隙を与えなかった。
かくて、日本は遂に一指も触れることができなかったアメリカは、今度は目先を変えて、ハワイに革命を起こさせ、その騒ぎにつけ込んで、これを占領した。またスペインと争ってフィリッピンやグアムを奪ったが、そのとき、フィリッピンの住民には独立の援助をしてやると言って、スペイン軍と戦わせておきながら戦いが終わると、うまうまと全島を自分の領土にしてしまった。
3.日本はひるまず伸びていく
こうして、東亜の諸民族は国土を奪われ、多数の住民たちの生活は生活は脅かされるに至った。このような東亜の情勢のうちに、ひとり日本は、明治二十七八年の日清戦争、明治三十七八年の日露戦争によって、東亜の安定のために尽くし、政治・経済・教育・学問等に渡って、国運は日に月に発展した。
かうして、製糸・紡績をはじめ各方面の産業は盛んに興り、鉄道・海運は開け、貿易も躍進し、日本の商品は支那をはじめアジアの各地に行き渡りはじめた。
4.こうなると日本が目のかたき
これでは、東亜各地の資源を独り占めにし、自国の製品をそれらの地方に売りさばいて莫大な利益をおさめ、自分の国だけが栄えていくようにという虫のいい考え方を方針としてきたアメリカやイギリスにとっては、日本が目の上のこぶのように邪魔である。
さらに、この前の世界大戦で、ドイツは負け、ロシアは革命で国が倒れかかり、フランスもイタリアもたいして実力がないと見て取ったアメリカとイギリスは、日本さえ抑えつければ、支那も満州も自分のものになったも同様だし、そうなれば、東亜ばかりでなく、世界全体を自分たちの思いのままに支配できると考えた。
日本がこの上発展し、一層強くなることは、彼等には何としても都合が悪い。そこで、日本を弱めることを、密かに思い巡らしはじめた。

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