國體の本義(二)前田慶一 現代語訳 中巻
現代語表記 国体の本義
士規七則 吉田松陰寅次郎
「士規七則」は、松下村塾において、師弟訓練の綱領を示すものでした。
日本精神の神髄を最もよく簡潔な文字によって述べています。
原文は漢文です。漢文訓読文で全文を示し、現代語訳しました。
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冊子を披繙(ひはん)すれば、嘉言(かげん)林の如く、躍躍(やくやく)として人に迫る。
顧(おも)ふに 人読まず、即(も)し読むとも 行はず、苟くも読みて 之を行はば、則ち 千万世(ばんせ)と雖も 得て尽す可からず。
噫(ああ)、復た何をか言はん。然りと雖(いえど)も知る所有りて、言はざること能はざるは、人の至情なり。
古人は諸(こ)れを 古(いにしえ)に言ひ、今我は諸れを今に言ふ、亦た 詎(なん)ぞ傷(いた)まん。
士規七則を作す。
書物を読めば、偉大な言葉が沢山載っており、読む人に迫ってくる。
思うに、人は本を読まない。もし読んでも実行に移さない。
読んでこれを行えば千代万代かかってもこれを行いつくすことはできない。
ああ、何とも言いようがない。
しかしながら、本を読み知るところがあって、人に言わないわけにはいかないのが人の情である。
いにしえの人は、これをいにしえに言い、私は、これを今言おう。
何を思い煩う必要があろうか。
士規七則をつくり記すことにする。
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一 凡そ 生まれて人たらば、宜しく 人の禽(きん)獣(じゅう)に異なる 所以を知るべし。
蓋し 人に五倫有 り、而して 君臣父子を 最も大なりと為す。
故に 人の人たる所以は 忠孝を本と為す。
一 およそ、人として生まれたからには、鳥、獣と異なる理由を知るべきである。
人には、五つの倫理(君臣、父子、夫婦、長幼、友の間にある人の踏み行うべき道)があり、その中でも君臣父子の間のものを最も重要なものとしている。
したがって、およそ人が人である理由は、忠と孝を大本とするところにある
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一 凡そ 皇国に生まれては、宜しく 吾が宇内(うだい)に尊き 所以を知るべし。蓋し 皇朝は万葉一統 にして、邦国(ほうこく)の士大夫、世々に禄位を襲(つ)ぐ。
人君は民を養ひて、以て 祖業を続(つ)ぎ、臣民 は君に忠して 父志を継ぐ。
君臣一体、忠孝一致たるは、唯だ吾が国のみ 然りと為す。
一 およそ、皇国に生まれたからには、我が国が世界の中でも尊い理由を知らなければな
らない。
皇統は萬世一系であり、位あるものは、代々禄位を継いで、天皇は、民を養い皇祖皇宗以来の事業を継ぎ、臣民は、君に忠を尽くして先祖の志を継ぐ。
君臣一体、忠孝一致であることは、ただ我が国においてのみ認められることである。
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一 士は 質実 欺かざるを以て 要と為し、巧詐(こうさ) 文過(ぶんか)を以て 恥と為す。
光明正大、皆な 是に由りて出づ。
一 武士は、質朴実直であり、偽りのないことをもって要点とし、偽り飾ることをもって
恥とする。公明正大であること、すべてはここから始まる。
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一 人、古今に通ぜず、聖(せい)賢(けん)を 師とせずんば 則ち鄙夫(ひふ)のみ。
読書 尚友(しょうゆう)は君子の 事なり。
一 人として、古今に通じず、聖人賢人を師としないならば、即ち、くだらない人間になってしまう。
読書をし、いにしえの人を友とすることは君子の行うことである。
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一 成徳達材(せいとくたつざい)、師(し)恩(おん) 友(ゆう)益(えき) 多きに居り。
故に 君子は 交遊を慎む。
一 人格を高め大成させ、 能力を錬磨し上達させることは、師の恩義ある教えと、友人
との益ある交わりを多く積むことにある。
だから、君子は人との交わりを慎む。
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一 死して後已(や)む の四字 は言(げん)簡にして 義広し。
堅忍果決(けんにんかけつ)、 確乎として 抜く可からざる者は、是を 舎(お)いて 術(すべ)無きなり。
一 死して後やむ(死而後已)の四字は、言葉は簡単だが、意義は非常に大きく広い。
意志をもって堪え、決めると断行し、何事に揺るがない人物には、この四字をおいては、なる方法がない。
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右、士規七則は、約して三端と為す。
曰く、立志を以て万事の源と為し、
交を選びては以て 仁義の行を輔け、読書を以 て聖人の訓を稽(かんが)ふ。
士、苟くも此に 得る有らば、亦た 以て 成人たる可し。
右の士規七則は、要約すると三項目になる。
即ち、志を立てることを全ての大本として、
友を選ぶことによって仁義の行いを助け、
読書によって聖人の教えの意味を考えることである。
武士として、この三項目で体得することがあれば、人として大成することができるであろう。
以上
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